話し方の心得 生きている喜びを見つけるべし

皆様こんにちは
ご無沙汰しております。
お変わりございませんか?
低い雲が垂れ込め、ここ東京もすっかり梅雨の季節。

雨の日が好きです。心静かになれるから。
洗濯は乾かないけれど、普段「積読」だけの本を読んでみると
心がカラリと晴れ渡るのを感じます。

雨の日も悪くないな。そう感じたのはいつの頃かしら。
そうあれは、主人と旅をした数年前。
会津の西街道は遠い昔にタイムスリップしたような町並み。
煙るような山並みと、滴るような新緑にいだかれ
ひっそり寄り添うようなその町に
私たちは安らぎを感じていた。

あの頃主人の仕事は激務だった。私たちは芯から疲れきっていて
ようやく訪れた久しぶりの休みを利用して旅に出た。

雨の中、車を走らせていた主人が偶然立ち寄った
古民家作りの、ひなびた温泉宿で日帰り入浴をした。
一足先風呂から出た私は主人を待つ間、何をするわけでもなく
旅館の縁側でただぼんやりと雨を見つめていた。

静かだった。
聞こえてくるのはただ雨音だけだった。
軒先を静かに伝わる細い絹糸のような雨音だけが
ガラス戸を通して聞こえてくる。
こんな静かな時間があることを私は忘れていた。

心の琴線に触れるような音だった。

忙しさにかまけて自然の旋律を聴く時間など
すっかり持つことができなくなっている自分に気づいたが
同時にこうしてほんのひと時でも雨音を聞ける自分の身に
たまらない幸福感を感じていた。

「どんなに忙しくても健康で働けるから、こうしてたまの休みが輝くんだよね」
「そうだよ。毎日これだったらありがたみなんか薄れちゃうよ」
「こうして温泉につかって体を休められるなんて幸せだね」
「ほんと、感謝だね」「うん、感謝だね」
「こんないい街へ行こうって言ってくれた陽子ちゃんにも感謝だね」
「こちらこそ、連れてきてくれた、だんな様に感謝しなくちゃ罰が当たっちゃうよ」

私たちはまだ降り続く雨の中を
ひたすらは走り続ける車の中で
どちらからともなく、感謝の言葉を繰り返していた。

それは生きていることへの感謝でもあった。
自然の懐にスッポリ抱かれた私たちは
ただ自然の流れに身を任せるしかなかった。
雨が降ったら雨のままに身を任せるしかなかった。

そして山間を渡る風の音や、
その風に揺れる緑の色が
一体になって織り成す自然の豊かな表情に
私たちの表情も和らぎ
心がすっかり洗われていくのを感じていた。

疲れていたのは体じゃなかったんだ。
心のほうだったんだ。
私はまた生きる力を内に抱ける喜びを
この旅からもらった。

あの日秋葉原を「旅」したあなたは何を見にきたの?
あなたはただ「浮遊」してただけじゃなかったの?
「観光」の本当の意味を知ってる?
「光を観る」って書くでしょ。
「人が生きている喜びを見つめる」
秋葉原の歩行者天国は、さまざまの人々が
生きている喜びを、体現する場所だったのよ。

平凡が一番幸せ。
朝起きて秋葉原に出かけて
友達同士たわいない話しをして
またある親子はパソコン買って、
おいしいもの食べて
それぞれの家に帰って、
ゆっくりお風呂に入って、
あったかいおふとんにもぐって
ぐっすり眠って
また明日を迎える。

そんな平凡だけれど、一番の幸せを
あの人たちはもう二度と送ることができない。

「一番の天国」だったはずのあの場所から
秋葉原の「天国」から家に帰ることができなかった。
平凡な日常はもう永遠に訪れない。

「輝くような」「ありきたりの一日」を
もう永遠に築くことができない。

初七日にあたる日曜日の夜、主人と二人
あの交差点にお参りに行かせてもらった。

私の家から秋葉原の高層ビル群が見渡せる。
あのビル群の真下で起こった惨状を
私達はこれからずっと記憶していかなければ
ならないことに、言いようのない
悲しみを感じる。

秋葉原がアキバと呼ばれるようになってから
私はあの町を敬遠するようになった。

最後に行ったのは10年ぐらい前だろうか?
あの町の変貌に私はついていけなかった。

絶えず聞こえてくるおびただしい音楽に
私は自分の心がざわつき、落ち着かず
ひどい嫌悪感に襲われ、帰り際私は主人にきっぱりと言った。
「昔の電気街の方がよかった。なんか今の秋葉原は疲れる。
もう私はこない」
おばさんと笑われようが私はこのときホトホト疲れきってしまった。

歩いても20分ほどの街だが
それ以来私はあの街に行くことはなかった。

まさかこんな形で足を運ぶことになろうとは
夢にも思わなかった。

二度と行くまいと思った街に
どうしても行かなくては気がすまなかった。
亡くなった人たちに手を合わせたい。
ただそれだけの気持ちで足を運んだ。

交差点の白い献花台は花とお線香の香りに包まれていた。
夜9時を回っていたが、たくさんの人が立ち止まって
手を合わせていた。

悲しさ、悔しさ、腹立たしさ、切なさ、やりきれなさ。
さまざまな感情が言葉の代わりに涙となって
ぬぐっても、ぬぐっても落ちてくる。

いろんな感情がうずまいていたが
いざ、あそこに立つとただこの言葉しか出てこなかった。
「痛かったでしょ。かわいそうに」
私たちはは何度も何度も言葉をかけながら手をあわせた。

傍らの青年が、一人ひざを抱えて泣きじゃくっていた。
私はいてもたってもいられず
思わず青年の震える背中をなでながら
「あんたは元気で、がんばるんだよ」と励ましていた。
青年は大きくうなずき再び号泣した。

ビル街のネオン明るい交差点には
まったくもって不似合いの号泣が
いつまでも突風のようにこだまする。

そこで手をあわせる全ての人の
無言の思いと合致することに
私は余計にいたたまれず、
ふたたび涙があふれでた。

亡くなった誰かの知り合いなのか?
私は違うと感じたから、
声をかけ、背中を思わず撫でてしまった。

アキバを愛していた青年かもしれない。
犯人と同じようにアキバが好きだった。
亡くなった人と同じようにアキバが好きだった。
皆が大好きだったアキバで起こった惨状が
この青年には耐え切れないのかもしれない。
とっさにそう思ったから
私は思わずその見知らぬ青年に声をかけてしまった。

「あんた元気でがんばるんだよ」
それをもっと前にこの青年ではなく
犯人になってしまった彼に言ってあげたかった。

何処かで会っていたら
あの「書き込み」と同じ言葉を
会って一言でもつぶやいてくれたら
そう言ってあげたかったよ。

だけど私たちは会えなかった。
会えなかった縁が悔しい。

犯人になりたくて生まれてきたわけじゃないでしょ。
犯人になってしまった彼に哀れさを感じる。
馬鹿者って言いたいよ。

いい友達いたんじゃない。
なんでもっともっと友達を信じなかったのよ。
苦しい心の内もっともっと愚痴ればよかったじゃない。
「俺駄目だけど、見捨てないでくれよ。俺がんばるからさ。
お互いこれからもがんばろうな」
そんな簡単な言葉さえあんた出てこなかったの?

親が憎けりゃ、暴力なんてふるわず、
言いたいこと親に向かってもっと
もっと言えばよかったじゃない。

「絵なんか手伝わなくていいよ。俺が作文書くからいいよ。
へたくそだって笑われたっていいよ」
親子なんだから喧嘩の一つや二つ(私なんか何度やったか)
ど派手にやればいいのよ。お互い何遠慮してたのよ。

自動車が好きなら、短大卒だっていいじゃない
胸張って、自動車関係の仕事をすればよかったじゃない。
(あたしなんか自慢じゃないけど、成績なんか最悪よ。
40歳まで英語と数学と漢字テスト0点の夢にうなされ続けたんだから。
いかに勉強ができなかったかわかるでしょ。
40過ぎて夢見なくなって「これでようやくテストから開放された」
とあまりの嬉しさに主人と祝杯あげたぐらいなんだから)

お勉強苦手な世の諸君。言っておくけど世の中学歴じゃないよ。
私はそれでも必死こいて短大入ったけど
そこで栄養学を「学びたい」と「本気で思ったから」
だから高3になってからだったけど(あー遅い。だからあんたは駄目なのよ)
もう夢中も夢中、寝食忘れて?勉強したわよ(この中学まで最低な私がよ)
こんな私だってやるときゃやんの。

短大でも「もう私の限界」って本気で叫んだぐらい負けずに勉強したよ。
だから短大卒でも私はちっとも恥ずかしくないし
むしろ、自分の学校を誇りに思っている。
(こんな私を見捨てずありがとう)

いいかい。くどいようだけどもう一回言うよ。
学歴じゃないよ。
ようは自分がどれだけ人生と真剣に向き合ったかだよ。
だからそれぐらいのことで卑屈になっちゃ駄目。

あんたは全部中途半端だったの。全部弱腰で逃げ腰なのよ。
まるで昔の私みたいだから、余計に腹が立つの。

「どうせ俺は」「何やったってだめなんだ」
「彼女がいない」フン、25歳ごときで何、寝言言ってんの。
それなら33歳で結婚した私はどうすんの。
25歳の頃なんか独身を大いに楽しんでおりましたわよ。

「フン彼氏なんて邪魔だもんね」とは言わなかったけど
お陰様で無事?栄養士になって住んでた町の
それこそベット数100床にも満たない
小さな病院勤務だったけど
一生懸命仕事して、まとまった休みとなれば
それっとばかり、あちこち旅行三昧よ。

三陸ではいくら丼。佐渡では蟹食べ放題ツアー。
三重では、松坂牛のすき焼き。
お陰でいい思い出たくさん出来たわよ。
あーほんと楽しかった。
(あのー陽子さんそれって食べ物ばかりなんですけど)

それこそ多くの土地を観光し、
たくさんの人に出会って
「光を観て」きたわ。

何でもっと「光を観なかった」のよ。
なんで光から目をそむけたのよ。
光は降り注いでたんじゃない。

こんなにいっぱい光はあふれていたのに
ひとつもキャッチできなかった。
ひとつ残らず全部闇の方へ
それも自分から導いてしまった。

親のせいでも、会社のせいでも、社会のせいでもないよ。
全部自分から導いちゃたんじゃない。

もっと早く大馬鹿者って言いたかったよ。

平凡をかみ締めて
平凡をいとおしんで
平凡を抱きとめて
平凡に生きていける今日に
感謝しよう

あふれる光を体に感じよう。
あふれる光を心で感じよう。
あふれるひかりを内に抱きしめて
あふれる光がふりそそぐ明日に
感謝しよう。

今俺ははこの地で旅をする。
遠い街に憧れた日もあったけれど
親を疎ましく思った日もあったけど

毎日が同じことの繰り返しだけど
会わす顔ぶれはおなじみだけど
俺の涙を知っている人がいる

与えられた地で
与えられた任をまっとうする

生きてることが旅ならば
俺の旅はこれからも続く

俺ははいつでもどこでも飛んでゆける
心に自由という羽を持ったから
だから今俺はこの地で旅をする

今俺はこの地で息をする。
あえぎも息苦しさも感じることなく
のびのび青い息を吐く

明日の約束は埋まってなくても
ため息なんかじゃない
今日の無事に感謝して
安らかな夢の中で遊ぶ

友達とは遠く離れてしまったけれど
友達を裏切りたくないから
会えない長い時間は
友達にふさわしくて
負けない自分を磨くさ

いつか会えたその日には
互いの無事を祝って乾杯しよう

変わってないね 変わってないさ
そんな他愛ない昔話で盛り上がりたいね

お前が無事でさえいてくれたなら
俺はちっとも寂しくないさ

今俺の心はどこへでも行けるから
だから俺は今どこへも行かない。

今俺はこの地で旅をする。
今俺ははこの地で息をする。

今日も戯言におつきあいいただきありがとうございました。
みなさんもいまそこに身近に降り注ぐ
光を汲み取って大切に生きてください。

毎日少しでも汲み取ってゆくことが
話し方の一番の近道であることを
皆さんにお伝えして
今日のお話を終わりにしたいと存じます。

それではごきげんよう。

youko