日曜日の午後。FМのラジオから流れてくるクラシックを聴くのが好きだ。
クラシックに詳しい訳ではない。ただただ流れてくるピアノのメロディや バイオリンの音色が好きなだけ。その日も私はいつものように コーヒーを淹れ、ラジオから聴こえてくる音楽を楽しんでいた。 「リスナーからこんな質問のハガキが届きました」と 番組の司会者でプロの女性演奏家が その一枚のハガキを読みだした。 「お二人は演奏中に失敗した時、どのような気持ちになりますか?」というような 趣旨のハガキだった。 もう一人司会を務めるお笑い芸人の彼がこう切り出した。 彼も有名な演奏家から直接指導を受け 大変上手なピアノ演奏を披露する人である。 「もちろん失敗しないようにするのが一番ですが、 失敗することを気にするより、失敗を笑いに変えられるぐらいの強い心を 作ることです。僕はお笑いの世界にいるので、鍛えられて良かったと思っています」 と答えていました。私はうーんとうなずいてしまった。 丁度その日、畑に行ってちょっとした失敗をして少し落ち込んでいたから この言葉が心に深く沁み通った。 失敗はこんな事だった。 「何かお手伝いすることありますか?」 あいにくに雨模様で思うように作業が出来なかったが、 せっかく畑にきたのでと思い、隣の畑の Iさんに声を掛けた。Iさんはいつも親切に素人の私に丁寧に指導してくれる女性だ。 「悪いね。じゃあ無花果採るのを手伝って。後で皆で分けるから」「はい」 「そこの茄子が入ってるバケツ使って、茄子はその辺にほおっておいていいから」 私は言われるままに、茄子をバケツから出し、美味しそうに熟れた無花果を 摘んだ。「沢山取れましたよ」私は嬉しくなって皆に見せた。 その時だった。コレマタいつも私に親切なHさんが大きな声で 「うわーっ、やっちゃったなあ。そのバケツ洗わんかったのか? そのバケツに入ってたの、牛の糞が混ざってた肥料やで」 ぎゃーなんてこったい。それこそ「やっちまったぜー」である。 私は「ごめんなさい」と「すみません」を繰り返すしかなかった。 「水で洗ったらええ」と水場で洗うのを手伝ってくれたが 私は言われるままで何の配慮もしない(できない)自分が恥ずかしく、情けなかった。 そんな気持ちを引きずっていたので、余計に先ほどのラジオから流れた 言葉が心に響いた。「失敗を恐れぬ強い心」まだまだ修行が足りない私だが 恐らく又別の失敗はするだろう。でも同じ失敗はしないよう心掛けたい。 ここでめげずに畑に行こうと思う。 そしていつも以上に元気な声で皆に挨拶をしようと思う。 「おはようございます」の他に「いつもありがとうございます。 頑張りますので、またよろしくお願いします」の言葉を添えて。
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強い心
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