街は色づき始め、秋の装いを始めた。
静かな雨の日曜の午後。 大好きなクラシックの番組を聴いている。 年を取ってきたせいか、近頃は何でもないことに 感謝する日々に巡り合う。 若いころは、感動や感激の連続だった。 字のごとく、激しくて、自分中心に動き回るばかりだった。
今はこうして好きな音楽が聴けるだけで、感謝の念が湧いてくる。 先週の日曜は体調が悪くて、この時間は床に臥せていた。 御蔭さまで体調も元に戻り、文章まで打つことが出来る。 これだけでもありがたいと思う。
ベットに横たわった若い人は体中に管が刺さっていた。 顔は薬のせいだろう。むくみで腫れている。 気の毒でまともに見ることさえできない。 その母親が、私の横で買い物の会計をにこやかに行っている。 その横顔に、悲しみや憂鬱さは微塵も感じられない。 いやむしろはつらつとして、清々しい。
これは先日主人と買い物に行った先で遭遇した出来事。 どうしたらここまで強くなれるのかしら。 どうしたらここまで優しくなれるのかしら。 この境地に到達するまでにはどれほどの悲しみがあったのだろう
ベットに横たわる若い人の体はしっかりとしていた。 生まれつきではなかろう。 人生の途中で、何かのアクシデントに見舞われたのだろうか。 事故か、病気か。 いずれにしても本人はさぞや悔しいであろう。
双方の思いに馳せてはみるものの、 私にはそれ以上の言葉が見つからない。 人生はなんて重たくて、残酷なんだろう。
せめてもの救いがこの母親のおだやかな笑顔だった。 「生きてるだけで、ありがたいな」 車中、主人がつぶやいた。 主人も同じことを感じたのだろう。 私は「うん。ほんとだね」と答えた。
どうぞこの親子に幸あれ。 そう願わずにはいられない 秋の一日だった。
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秋の一日
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