美しき統率

梅ちゃん先生が終わった。戦後の焼け野原から立ち上がり、

医師として歩んでゆこうとする女性の物語だった。

東北の被災地の方には大変申し訳ない言い方だが、あの焦土と化した

戦後の情景に、津波で壊滅状態になった町が重なり「あーあここから

日本が立ち上がったのだ」とひときわ感慨深い思いになり

「今、日本はまさに二度目の復興の中にあるんだなぁ」と思いを馳せながら拝見させていただいた。

思えば原発が爆発したニュースの映像では、広島、長崎の原爆の映像と重なり悪夢を見ているようだ

った。

先の大戦で、衛生兵として過ごした私の父は

戦争に関しては多くを語らず平成15年に80歳でこの世を去った。

生前、話してくれたことの一つに

「日本人なら死ぬまでに一度は被爆地へ行け」だった。

父には申し訳ないがまだその約束は果たせずにいる。

(お父さんごめんね。いつか必ず行くからね)

 

福島第一原発が爆発した時に、父が生きていたら何と言っただろうと思った。

そして今、隣国と領土の問題で非常に厳しい問題に直面している我が国。

一発触発にもなりかねないこの状況下に、あの厳しい時代を生き抜いた父が

もし生きていたら何と言っただろうか?

 

私が幼いころ雨が降ると、父はこんなことをよく言ったものだった。

「空から降ってくるものが雨だけなんて幸せだ。お前はいい時代に生まれてよかったな」

 

雨あられのように容赦なく降ってくる焼夷弾から逃げ惑った人間からすれば

横なぐりの雨でさえ幸せに感じたのかもしれない。

 

「雨露しのげるだけでもありがたいことなんだぞ」そんなこともよく言っていた。

梅ちゃん先生の場面でバラックの家やトタン屋根の下で

家族が肩を寄せ合って生きる姿に貧しくても、たくましく生きる日本人の姿を垣間見、

戦後復興に燃える町工場の人々の姿の中に

誇り高く生きることを旨としていた

日本人の「真の心」を感じ取った方も多いのではないだろうか

 

あの頃も、そして今回の震災でも生き残った人々はお互い肩を抱き寄せ

生きている重みを、幸せをかみしめ、

亡き人々に思いをはせながら

隣人を思いやる心を忘れず

他者の幸せを我が喜びとし

前向きに生きる術を常として

国難とも言える日々を過ごしていらっしゃる。

 

そんな人々に私は心から拍手を送りたい。

 

それは決して鼻高々自慢するでなく

声高に叫ぶでもなく、まして暴力的に荒げることなど己の恥じであり

それこそ梅ちゃん先生ではないが

梅の花の匂うがごとくほのかで密やかで

甘やかに匂うがごとく

強く優しく気高きものではないだろうか?

それこそがこの国の人々の誇るべき姿なのではないだろうか?

 

先に行われたあのデモに私たち日本人は何を感じ取っただろうか?

同じデモでも主人が参加した原発再稼働反対デモは

整然と行われ、ましてや略奪や暴力などとは無縁のデモだった。

それこそ素敵だと感じる。

 

デモと言うよりもあまりにも粛々と行われ、

今思えば式典の様にさえ感じる。

 

それは誰かに支持されたものではなく、ましてや強制された訳でもなく

己の心の叫びに忠実に従い、被災者を慮り

大切な何かに突き動かされ人々はかの地に集まった。

 

命を生みだす母親たちが次の世代のことまで考え

命を懸けて守らなければならぬ我が子の手を引いて参加する。

交通費をかけてはるばる福島から

いや、日本全国からいてもたってもいられず

さまざまな業種の人々が老いも若きも

個々の統率の基に参加する

それこそが「自由な国」のあるべき姿だと思う。

 

「なんでもあり」だから自由なのではない。

「なんでもあり」が自由なのではない。

 

三度目の復興などもうありえない。

「想定外でした」などもう許されない。

声高らかに自由を叫ぼう。守るべきものが何かをもう一度問いかけよう。

それが私たち生きている者たちに課せられた使命だと感じる。

先人達が命を懸けて勝ち取った本当の自由の意味を今一度考えよう。

国内外で起きている様々な現実を受けとめ、知恵を出し合うことこそが

明日に繋がると私は信じたい。

 

「戦争では負けたけどやっぱり勝ち取った気がするな」

梅ちゃん先生の最終回を見てそんなことを感じた私です。

 

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